批評(レビュー) 
はじめに
このレビューと評価は、まだカルチョビットをプレーしたことがない方のために、ゲームの概要と個人的な批評を紹介したものです。
購入の参考になさる方は、人によって違った楽しみ方、違った評価があることを理解した上で、お読みください。
批評(レビュー)
カルチョビットは、新設されたサッカークラブの監督となって、チームを育成、指揮するシミュレーションゲームです。プロサッカークラブをつくろう(サカつく)シリーズと同じジャンルのゲームですので、その違いも交えながらご紹介します。
カルチョビットに登場するリーグとチームと選手は、全て実在しない仮想のものです。女性も男性に混じってプレーしますし、選手の名前も自由に変えられますし、選手の能力も好きなように育成できるので、自由度は高いです。実在する選手や友人の名前を入力しておけば、ゲームの選手にも愛着がもてると思います。
サカつくが「有力選手をかき集めて強いチームを作る経営ゲーム」なのに対し、カルチョビットは「時間をかけて理想の選手とチームを作る育成ゲーム」と言えます。例えば、ストライカータイプのフォワードを作ろうと思った場合、サカつくでは、ストライカーとしての素質が高い選手を獲得し、限界まで育成することがポイントになりますが、カルチョビットでは、獲得したばかりの選手の特徴はそもそも大雑把で、ストライカーを育てたいなら、それに必要な能力や動きを監督が時間をかけて指導しなければなりません。例えるなら、荒削りのユース選手を育てるのがカルチョビット的育成です。
育成ゲームである以上、プレーヤーである監督は選手の能力を正確に把握しなければならないのですが、カルチョビットはその方法がかなり特徴的です。画面で確認できる能力は、シュート力とかセービング能力といった明確な能力ではなく、キックとかテクニックといった実に曖昧な項目です。そのため、フォワードとゴールキーパーが似たような能力になることも珍しくありません。選手の動きを決定づける能力も実は存在し、これがポジション適正ともいえるのですが、この重要な数値は隠しパラメーターになっています。そのため、監督であるプレーヤーは、試合中に各選手がどのような動きをするか確認し、練習で監督の意図する動きを指導し、また試合でその成果を確認する、という作業を繰り返さなければなりません。カルチョビットの制作者は、観戦を楽しんでもらうことをコンセプトに挙げていて、実際にそのようなゲームに仕上がっています。この作業に面白さを感じられない方も少なくないと思いますが、個人的にはサカつくの対抗となりうるゲームと評価しています。
選手は、試合中に監督が発見した課題に対して練習することで成長するのですが、この発想が実に素晴らしいです。弱い相手に勝っても得られるものは少なく、強い相手には負けても得られるものは大きいというのは、スポーツの実状をよく反映しています。サカつくでは、良い結果で勝つほど大きく成長するので、カルチョビットとは対照的です。
カルチョビットで最も印象が悪いものは、その画面の安っぽさです。どう考えてもDSでお釣りがくるクオリティーで、ゲームボーイに鮮やかな色をつけた程度の印象しかありません。もちろん、ゲームの良し悪しは映像だけではありませんが、3DSならリアルな動きも十分に再現できたはずです。試合はスキップも高速化もできないので、最大のウリである試合観戦が最大の欠点にもなってしまっています。
画面だけでなく、操作全般に関しても洗練された印象は受けません。普通なら、全てのボタンをフル活用して、できる限り最短のタッチ数で操作を完了させられるように設定するものですが、カルチョビットはスキップとキャンセルが同じボタンになっていたり、ソートが一覧の端からしか選べなかったりと、操作性に無駄な手間がかかります。
カルチョビットは、サッカー選手の視点でも、観客の視点でもなく、監督の視点で作られたゲームです。選手の能力は実際に試合で使ってみることでしか判断できませんし、練習の成果も試合で使ってみることでしか判断できません。近年のゲームは、スポーツにしろシミュレーションにしろ膨大な数値が並んでいて、プレーヤーはその数値を見て能力や成長を判断するのが当たり前になっていますが、カルチョビットのような動きで判断させるシステムは、サッカー監督の現実を再現するのにぴったりです。かなり癖のあるゲームなので、万人受けするとは思えませんが、好みさえあえば、いつまでも記憶の残る名作になると思います。
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